吉田悠吾の老人ホーム放浪記

高次脳機能障害の当事者の話を聞いて

おおた社会福祉士会の6月の定例会は高次脳機能障害の当事者である荒井隆浩氏(大田区高次脳機能障害当事者会「楽花」代表)をお招きして「高次脳機能障害」「当事者会活動」についてお話していただきました。

彼は10年前のバイク事故で脳にダメージを受け、退院時には医師のもう問題ないという言葉を信じて社会復帰する。

ところが仕事に戻ると記憶力の低下や段取りがうまくいかず引きこもってしまう。

ある時、交通事故の診断書を元にネットで高次脳機能障害という障害にたどりつき自身に当てはまることが多い事に気づく。

そこで高次脳機能障害に関する診断ができる病院や法律家を片っ端から頼るのだがなかなか相手にされない。

それでも諦めなかった彼はとある行政書士との出会いから、茨城県内の病院で高次脳機能障害の診断を受け、障害者手帳の取得まで至るのである。

障害者手帳を取得したからといって何が変わるわけでもないが、一人暮らしを始め、今は社会福祉法人東京コロニー東京都大田福祉工場でDTPオペレーターの仕事をしている。

高次脳機能障害の当事者会の代表であると同時に、この障害を沢山の方に知ってもらいたいという彼の想いに共感したし、ある程度障害について理解した。

物忘れがある人もいる段取りの悪い人もいる。それって普通じゃない?と思われるかもしれない。しかし事故をきっかけに脳が入れ替わったような感覚。1番苦しのは突然そうなってしまったことだという彼の言葉はこの障害で苦しんでる当事者ならではの重みのある言葉であった。

彼は一目見ただけでは高次脳機能障害と判断できない。障害者、健常者以前にタトゥーの影響からか、見た目はどちらかといえば関わりたく無い人間の部類に入る。そのタトゥーは人を見た目だけで判断するような人間は、高次脳機能障害という障害の特性上、障害の理解などできるはずもなく、そもそも関わるつもりは無いという主張の象徴では無いかと感じた。

老人ホームの窓口 吉田

 

*高次脳機能障害とは、病気や交通事故など、様々な原因によって脳に損傷をきたしたために生ずる、言語能力や記憶能力、思考能力、空間認知能力などの認知機能や精神機能の障害を指します。日常生活場面では、例えば、今朝の朝食の内容が思い出せなくなった(記憶障害)、仕事に集中できなくなった(注意障害)、計画が立てられなくなった(遂行機能障害)、言葉が上手に話せなくなった(失語症)、人の話が理解できなくなった(失語症)、歯ブラシの使い方がわからなくなった(失行症)、道に迷うようになった(地誌的障害)、左側にあるおかずが目にとまらず残してしまうようになった(左半側空間無視)など、様々な症状が見られます。(「高次脳機能障害者地域支援ハンドブック(改訂第五版)」より)