吉田悠吾の老人ホーム放浪記

後見支援信託と後見支援預金

被後見人の財産が多い場合、家庭裁判所から職権で監督人を就けるか、後見支援信託・後見支援預金を利用するかどちらか選択を迫られます。

信託銀行が取り扱っているのが後見支援信託、銀行や信金が取り扱っているのが後見支援預金になります。

因みに、保佐・補助の累計では利用できません。

実際、どの程度の資産があれば後見支援信託・後見支援預金の話が出てくるのか各家庭裁判所によって運用は異なります。

東京家庭裁判所では親族後見人は〇〇〇円以上、社会福祉士の後見人は〇〇〇円以上など、具体的な基準があるようです。

後見支援信託・後見支援預金を利用することで家庭裁判所の指示が無いと預けたお金はおろすことができなくなります。

つまり被後見人の資産は守られ、後見人の横領等不正防止対策になります。

ただし、被後見人の意見等が汲み取れるような制度ではなく、支援者側の都合で一方的に被後見人の資産をブロックしてしまう仕組みに、違和感を感じてしまいます。

 

私の所属している“権利擁護センターぱあとなあ東京”では以下の理由から後見支援信託・後見支援預金に反対の姿勢を示しています。

1.本人の意思・意向に沿わない制度であること
障害者権利条約の批准から、包括的に代理権を付与する後見類型が特に問題であると指摘されています。この後見制度支援信託は、後見類型のみに適用され、また、信託の必要性を判断するのは、親族や後見人等の支援者側の意向となります。不正防止のために適用される制度であるとしても、本人側の希望や意向を尊重できる仕組みに変える必要があると考えます。

2.「支援」が支援者側(後見人・家庭裁判所)の支援として使われていること
1.のように、支援者側の利便性やリスク回避のために適用される制度である以上、身上監護面の選択肢を狭めることにつながることは否定できません。財産管理を適正に行うことは、保護的視点ばかりではなく、本人のための積極的活用という視点が不可欠であり、本人の権利擁護や身上監護が後退しないよう、社会福祉士は対応しなければならないと考えます。(2011年11月6日の社団法人日本社会福祉士会山村睦会長による見解表明)

3.後見人等に対する監督体制や支援機能への取組みへの意見提言が求められていること
わが国においても、成年後見制度利用促進法が施行され、その基本方針のなかには、成年後見人等への監督のみならず、相談の実施や助言その他の支援に係る機能を強化するために必要な措置を講ずる、とあります。後見制度支援信託は、監督の代替案ではない、という大原則のもとにスタートしておりますが、そのことを十分に理解し、本人にとってどのような機能や仕組みが必要なのか、考えていく必要があります。

 

個人的には、お金をブロックするのではなく、本人のためにお金を積極的に使うことが大切だと考えています。

一般的な老人ホームに入居していたならば、高額でも、より手厚いサービスの受けられるホームへ移動する。

旅行や外食などの外出支援の自費ヘルパーを活用するなど、本人の生活が豊かになるサービス提案は沢山あると思います。

お金を積極的に使うことが結果的に日本の経済発展に繋がるのではないでしょうか。

老人ホームの窓口 吉田